Roots

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先日、高校時代の友人を訪ねて上海に行った。
これまでどうしても足が向かなかった中国だが、
自ら行かずして中国のことを語ることはできない。
良い機会だと思って。

上海の人口は約2,400万人。東京の1.8倍ほどの人口だ。
さぞや人で溢れかえっているのだろうと、少々憂鬱な気持ちを
抱えて降り立った。

期間中に滞在させてもらった高校時代の友人の自宅は、
閑静な高級住宅街であり、景観もサービスも行き届いている。
私のイメージする中国のイメージではないとてもクリーンな印象だ。

一日目の夜は「新天地」という若者・観光客が集まるエリアで
中華を食べて休息。
旅をするときは、あれやこれやと調べては毎日みっちりとプランをつくる
方だが、今回の旅は全て上海在住の友人にお任せ。
気分的にはらくだし、全くの予備知識がない分、どんな場所に連れてって
くれるのかワクワクしていた。

2日目。建築やデザイン、アートが見たいとだけ伝えていたので、
まず連れて行ってくれたのは中心地より少し離れた場所にある「半島1919」。
工場をリノベーションして、アトリエやデザインオフィス、デザインセンターが
集積するエリアだ。基本そのままの外観を活かしているところが良かった。

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半島1919

中国語がぺらぺらな友人にお願いして、アトリエにいた若い陶芸家に話しかけ、
どんな作風なのか、この場所の特徴、彼の想い、いろいろと語ってくれた。
とても真面目な感じの作家さんだった。辺りをぐるっと回っていると面白い建物が。
このエリア一帯の拠点となっている芸術設計センターだ。

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半島1919 センター

次に訪ねたのは、同じく工場を再生したアートスポット「M50ギャラリー街」。
ここは半島1919よりも凝縮していて、建物の各部屋には陶芸、絵画、現代アート等の
アーティストが制作活動をしていて見れるのが面白い。
英語が通じないので、交流ができないのが少々残念であった。

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M50ギャラリー街

次なる目的地へぶらぶらと歩いていると、よく目にしたのがアパートの外に
棒を延ばして洗濯物を干す風景。日本では当たり前だが、上海にはベランダというものが
ほとんどない。となると、こうやって干すしかないんだろう。
ヨーロッパのした街でもよく目にした風景だが、上海ではより生活感がにじみ出ている。

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上海の日常の暮らし(その1)

中心部へと戻って訪れたのが「田子坊」。
古い建物が残っている狭い路地空間一帯がちょっとした観光地になっているスポット。
狭い路地の両側には、お土産屋さんや飲食店がずらっと並び、
アジア・欧米の観光客でごった返している。

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田子坊の風景

私はどちらかというと「つくられた」観光スポットにはあまり興味が
惹かれない方で、生活臭漂う場所を好んで訪れる。
旅先で必ずと言っていいほど足を運ぶのが市場だ。
田子坊にも市場があった。
野菜や海産物が並べられ、買い物客もほとんどが地元の人だ。
上海の暮らしを垣間みれる。

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田子坊の市場

あとは、田子坊の路地の中で広場になっているところで、
昼間からビールやワインを飲んで友人と話し込んでいた。
夕方からはもう一人友人が合流して上海料理を満喫。
とても充実した1日であった。

翌日は少々二日酔いの残しながら、中心地から1時間ほどのところにあるスポットへ。
任せすぎたせいか、駅名やスポット名をあまり覚えていない・・・
最初に訪れたのは、書家や画家、詩人として活躍した地元のクリエイター李さんの
庭園へ。

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書家・画家李さんの庭園

中国の庭園は、日本の庭園よりも垂直性が強い気がした。
描いているのは、李さんの絵にもあった山の風景だろうか。

ここには、田子坊と同じような、よりローカル色の強い買い物ロードがあった。
決して衛生上奇麗とは言えないが、地元観光客がほとんどで、
等身大の上海を象徴する場所である。

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上海ローカルの観光地

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道ばたで売られていたキムチ

その後、辺りのお寺・庭園を鑑賞し、次なる目的地「19参Ⅲ」へ。
ここはもともと食肉工場だったところを商業文化複合施設として再生。

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19参Ⅲ(1933)老場坊 外観

建物は当時のまま活かしていて、牛舎や牛の道がそのまま残っている。
建物だけでも十分見応えのあるところ。
強いて言えば、当時どういった使われ方がしていたのかを写真で展示していると
もっと面白いなーと友人と話していた。

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19参Ⅲ(1933)老場坊 内観

屋上からは上海の風景が一望できる。
遠くには、上海の経済成長を象徴する高層マンションが建ち並んでいるが、
足下には古びた建物の等身大の暮らしが根付いている。

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19参Ⅲ(1933)老場坊 屋上からの眺め

足下の暮らしの風景をなぞってみる。
いかにも壊れそうなバイクを駆使し、家の前の路上では洗濯や食事、
昼寝、会話、子供達の遊び。みちが暮らしの交流空間なのだ。
かつて日本にもあった、じゃりんこちえの下町の世界。
いつかは高層マンションに暮らしたい、下町に暮らす人はそう夢を
描いているのだろうか。

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上海の日常の暮らし(その2)

旅のクライマックスは、上海観光のド定番の川沿いの夜景スポット。
どこにいたのだと言わんばかりの観光客の数。。。
到着すると同時に対岸の建物がライトアップ。
クラシックな建物も並んでいて、中国とは思えない。

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ド定番の夜景

最後は、この夜景が見渡せる絶景のBARでしっぽり飲んで上海旅は終了した。
料理が美味しかったことはもちろんのこと、リノベーション事例をたくさん
見れたのは収穫だった。そして何よりも、華やかな上海の一面だけでなく、
贅沢ではない等身大の暮らしを覗き、光と陰ではないが
その対比を目の当たりにしたことが一番印象に残っている。

一部の人たちの上海ではない、みんなの上海だ。

3連休中は東京へ出張。

大都会東京にも、
息づく暮らし、重層された街の匂いを感じとれる
ローカルがしっかりと根付いている。

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おばあちゃんの聖地、巣鴨商店街。

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吉祥寺駅前の路地裏。

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吉祥寺の路地裏には、お店を発見する楽しみがある。

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井の頭公園

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軒先八百屋

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築地場外市場

「行きつけの店」。

それが、山口瞳にとっての鉢巻岡田やサンボアのように、
その店に行くためにわざわざ泊まりにいったり、その地にいるときは毎日のように
通ったりする店と定義するなら、私にとってはまだそんなお店ないのかもしれない。

でも、これから「行きつけのお店」をつくっていくとすれば、
大分市にある「方寸」は間違いなくリストの中に入るだろう。
ここ数年に行った飲食店の中で、ここまでに五感を刺激され、
食べることの感動をおぼえたお店はない。

週末、その「方寸」の感動と素敵なBOSS・久垣さんに再会するため、
わざわざ大分へ向かいそして泊まった。

一度方寸の魔法にかかってしまった私にとっては、
お店の人には申し訳ないけど、お客さんがいない方寸が好きだ。
なぜなら、方寸の空間、料理、会話、全てを独り占めできるからだ。
それくらいゆっくりと味わいたいお店なのである。

方寸の料理は、五感で楽しむことが考え抜かれている。
料理の美味しさはもちろんのこと、BOSSが厳選する器と盛りつけ、
色味、意外な食材の組み合わせ、全てに一切の妥協がない。

次はどんな料理が出てくるのかずっとわくわくしている。
一品一品に笑顔が溢れ、会話が生まれる。
かつてスローフードジャパンの石田さんがおっしゃっていたが、
方寸の料理は、「食の喜びを分かち合う」スローフードの目的に
叶ったお店なのだ。

方寸の極上の料理は、豊かな感性を持つBOSSと料理人の久垣さんが
いて生まれる。世界一予約が取れないと騒がれたバルセロナのエルブリは、
半年間営業し、半年間は翌年の新メニューのための研究・開発期間に充てられる
らしいが、エルブリのドキュメンタリー映画を見て、日本版のエルブリは
まさに方寸だと勝手ながらに思っている。

方寸の感性豊かな料理とBOSS、久垣さんに出会うと、ついつい時間を忘れてしまう。
昨夜も気づけば午前様であった。

たったひとつ、「行きつけのお店」と会いにいく人がいれば、
そこは立派な旅先になるんだと私は思っている。
つまり、私にとって方寸=大分市は度々訪れる旅先になったのである。

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ジョージナカシマの家具で彩られたカウンター

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関のイサキの姿造りと関アジ

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えびしんじょうのごまパン

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テリーヌと生ハム、ポテト

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茄子と鰯のミルフィーユ

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無花果の白和え

ゴールデンウィークは、打合せを兼ねて雲仙の小浜温泉へ。
いつもはレンタカーを借りて高速で行くのだが、このときは
バカンス気分に便乗して天草から島鉄フェリーで行くことに。

 

完全なリサーチ不足でした。こんなにも道が混んでいるなんて。
天草に入ってから鬼池港に着くまでに4時間、鬼池港でフェリーに乗る
までなんと3時間。。。周囲の車両ナンバーをみると、関西からの観光客が
多く、この時期はハウステンボス行きの観光客で大混雑しているようだ。

 

でも、待ち時間に出会った天草の暮らしの風景はのどかで気持ちがよく、
フェリーから夕陽もみれたことで疲れも吹き飛んだ。
オフシーズンにこれば、とっても豊かな時間が過ごせそうだ。新たな発見。

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小浜温泉には毎年数回訪れている。
STUDIO SHIROTANIの城谷耕生さんに会うために。
小浜温泉を拠点にしながら、世界を相手に仕事する世界的なデザイナーであり、
城谷さんのお人柄、素敵な事務所、新鮮な海産物、豊かな温泉と景観にすっかり惚れ込み、
いまではすっかり小浜ファンだ。

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この日の夜は、城谷さんご推薦の海鮮居酒屋で絶品を味わいながら、
とあるプロジェクトのこと、独立のご挨拶、小浜での取り組みについてお話をした。
城谷さんの仕事は、良い意味で境界がなくて、自分のスタンスをしっかり持ちながら、
地域や社会の課題と向き合っている。お会いするたびに、たくさんの刺激をいただく。

 

最近取り組まれているのが、「刈水エコビレッジ構想」。
過疎化が進む小浜温泉の刈水地区の地域資源を、観光的な目線からリデザインして、
活性化を図ろうというのが狙いだ。そのリーディングプロジェクトが、古民家を改築した
ショップ&カフェの「刈水庵」。

 

翌日、小浜温泉の中腹の生活道路を辿っていくと、刈水庵のサインが出てくる。
生活道路は地元の子供たちの遊び場だ。
こんな光景、今ではあまりみなくなったが、ここ刈水地区はゆっくりと変わらない時間が
流れているのである。

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刈水庵の近くにある古民家では、デザインマーケットが開かれていた。
食器や雑貨、洋服が、建物や敷地の中に並べられていて、若い人たちがやってくる。
写真にあるキューブは、象印のBARセット。昔の象印はとてもデザインに力を入れて、
こんなものをつくっていたみたい。その時代の思想やライフスタイルがわかり、昔の
デザインをみるのは面白い。いまなら果たして売れるだろうか・・・

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もう少し道を上ると、お目当ての刈水庵に到着。
当時の古民家の佇まいがそのまま残っている。
お金をかけずに建物を生き返らせるには、風と光を通し、そのまま使うのが一番だ。
最小限のリノベーションに留めて再生したと城谷さんに伺った。

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1Fはデザイン小物のショップ、2Fはカフェ。
1Fでは、市場に出ないキズものが売られていて、市販のものより値段が安い。
でも、その違いは素人にはわからない。捨てられるなんてもったいない。
城谷さんのものづくりへの姿勢が感じられる。丼もののボウルを2つ購入。

 

2Fのカフェは、小浜温泉の市街地が一望できるとっておきのスポット。
友達のお家に来るように、近所の人や観光客がぞろぞろとやってくる。
とっても居心地の良い空間。

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全国各地に、役割を終えて取り残されている古い建物がある。
「古い建物は、単なる遺産ではなくて、個人の記憶そのものである」
以前唐津でご講演いただいた建築家の藤森照信先生の言葉がいまも心に響いている。

 

建物は、時代を超えて、人の記憶を繋いでいく装置である。
いまの時代に合うように使い方を考え、無理のないやり方で、ひとつでも多くの建物が
息を吹き返せるように。そのヒントを、刈水庵に学ぶことができた。

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