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Roots

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2021.06.14 / thinking

今月の1冊。

人新世の「資本論」読了。

コロナ禍になって、暴走する資本主義のあり方に
疑問を持ち始め、マルクス主義が注目されているようだ。

そのマルクス研究者の中で注目を集めている1人が、
著者の斎藤幸平さん。

地球規模で気候変動が待ったなしの状況の中で、
SDGsやエコ、サステナブルといった耳障りの良い
キーワードが出ているが、結局その裏側には新たな
ビジネスを作り、消費させるための資本主義が蔓延
していて、先進国の消費のために途上国の自然や環境が
食い物にされている現実(グローバルサウス)。

斎藤さんは、気候変動を食い止めるためには、
小手先だけの、一部の富裕層だけが得をする
資本主義をやめない限り未来はないと警鐘を鳴らす。

その中で、晩年のマルクスの思想に着目し、
資本主義から脱成長コミュニズムへ転換を図るべき
というストーリーを描く。

現状認識と着眼点は大いに賛成するし、
鋭い分析だなぁと感心する。

一方で、「資本主義」を真っ向から否定して、
脱成長コミュニズムを推奨する考え方は
納得する部分とそうでない部分があるなぁと。

脱成長コミュニズムの考え方は、簡単にいうと、
地域や社会の財産を一部の企業や富裕層が独占するのではなく、
協同組合やその地域に住むコミュニティで管理することで
人間本来の豊かな暮らしが実現できるのではという提案。

その考え方は、私達が常に関わっている地域のまちづくりに
とてもよく似ているなと思う一方で、横並びのコミュニティの
あり方はとても複雑で難しく、どのように実現していくのだろうか
という具体的な提案まではなされていなかった。

あと、海外の資本主義や気候変動、マルクス主義の研究者や考え方を
かなり広い範囲で研究している一方で、
「じゃあ日本ではどうすれば良いのか」という日本独自のあり方に
ついての研究や分析がまだ不足しているのではと。

日本にはもともと地域の中で経済を回していくコミュニティが存在したし、
日本が世界に誇れる風土や文化もあったはずなのに、
いつの間にか便利さや目新しいものを追い続けて西洋化し、
どこの街を切り取っても画一的な街が広がり、日本の食料自給率は下がり続け、
日本の誇りやアイデンティティはどんどんなくなっていく。

日本独自の美徳や文化、災害時に世界から賞賛された美しきコミュニティを
生かすことができればきっと、斎藤さんが描く未来が拓くのではと
私なりの考え方を重ねてみた。

面白い本でした。

(佐藤 直之)

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