
須賀神社から望む小城市街地
独立してから、少しずつではあるが、地域活性化や観光、
地域ブランドのお仕事をする機会をいただいている。
その中で、地域づくりをこれからを担う地元の若手の方々
(といっても私より年上ですが…)を対象に、数回のまちづくり勉強会の
機会をいただいたのが佐賀県の小城市。
冒頭の写真は、よく観光ポスターで使われる小城市の代表的な風景。
小城市は何度も通ったことはあるが、お話をいただくまで降り立ったことが
なかった。「羊羹のまち」というイメージは持っていたが、佐賀の小京都とも
言われる風光明媚なまちのイメージはあまりない。そんなまちのことも知らないで
お話するなんてとんでもない。そう思い、小城市役所の方にご案内をいただいて、
まちなかを歩いて散策。
すると、羊羹以外にも、お宝がいっぱい!鉄道旅が好きな私にとって、
まず嬉しいのは小京都をイメージづけるこの駅舎。
いつもヨーロッパを旅した後にがっくりするのが日本の駅前の画一的な風景だが、
小城にはその佇まいがまだ残っている。

佐賀の小京都の玄関口。
小城の市街地は、この駅から山間にある須賀神社までがシンボルロードに
なっていて、まちの構造がとってもシンプルだ。これ、活かさない手はない。
須賀神社までは歩いていくことができて、その道すがらにリノベーションされた
施設や酒造、豊かな川が流れていたりと、歩くにもとっても良いところ。

小柳酒造の歴史的な佇まい

近年改修された旧深川家住宅(外観)

近年改修された旧深川家住宅(内観)

須賀神社前を流れる豊かな河川
そして何より、須賀神社がまちにアクセントを与えている。まちのシンボルだ。
須賀神社を上ると、豊かな自然と美しい景色を望める展望台が用意されている。
展望台でお会いしたおじちゃんは、定年まで大阪で働いた後にUターンで地元の
佐賀に戻ってきたが、小城の豊かな自然や文化に惚れ込んで移り住んできたそうだ。
毎日ここに来て風景を眺めているらしい。こういうおじちゃん、まちにとっては
とっても大切な存在。こういうまちに想いを持った方をお見かけすると、
無性にヒアリングしたくなる。。。その会話の中に、再生へのヒントがきっと
隠されているからだ。
須賀神社からまちへ降りると、そこそこに水路があったり、意外なところに石垣の道
があったりと。まだまだ活用できる地域資源がたくさんあることに気づかされる。
ほったらかして地域にとってはお荷物と思えたものが、これからの時代のまちづくり
においては反って、よそのまちにはつくれないまちのアイコンになっていく。

市街地の随所に見られる水路

隠れた石垣通り。
仕事と趣味の旅行とで、年代の割にはいろんなまちを訪ねている方ではあるが、
まだまだ知らないまちが多いし、ルーツが残っているまちもまだまだ日本にある!
と改めて実感した。
嬉しかったし、私のような「よそ者のおせっかい」がやるべきこと、お手伝い
するまちはまだまだある。高度経済成長で物質的に豊かになった日本は、
その次のステージとして、心豊かな社会の実現に向けたアジアのリーディング
カンパニーにならないといけない。
今朝の西日本新聞の「言葉のあやとり」の中で阿木燿子さんが随筆されて
ほんと同感だったけど、ゆるキャラという発想自体が安易であり、
地域はいつまでその「一過性の事業」に手を染めるんだろうかと嘆いてしまう。
建築家の藤森照信さんが言うように、個人の一生の思い出となる歴史的な建物や
暮らし、芸術文化といったまちの記憶を継承しながら、新たな感性を持ち込み、
まちとしての新陳代謝をいかに実現するかを考えないといけないと私は思う。
そのまちの再生の手がかりとなる資産が、小城市にはたくさん残っている。
勉強会の後に地元の若手の方々とお話ししている限り、その安易な方法ではなく、
30年、50年を見据えたまちづくりを真剣に考え始めているので心配はない。
あとは、その一歩をどう歩みだすか。考えた後は実践しかない。
私にはその一歩を歩みだしていただくきっかけしかつくれないけど、
このまちの佇まいがこの先もずっと残っていく方向へと舵を切ってほしいと
願っています。