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2021.05.21 / thinking

映画とまちづくり。

緊急事態宣言になって、どこにも行けない日々。
地方の出張もことごとくストップがかかって、
1年前の緊急事態宣言と同じ引きこもりの生活が
続いています。

こんな時だからこそ、これまでずっと貯めておいた
「観たい映画リスト」を引っ張り出してきて、
ネットフリックスやアマゾンで見れない昔の映画や
名作のDVDを借りてきて毎日のように観ています。

まちづくりの仕事をしていると、関連する書籍や雑誌を
読むことが多いですが、全然畑違いの映画や本に触れて、
新たな感性や教養を養うこともとても大事で、
意識的にそういう時間を取るようにしています。

映画とまちづくり、一見すると全然関係ないように思えますが、
地域や人々の生活、文化、生き方を学ぶ上ではたくさんのヒントで
溢れています。

思い出すのは、学生時代に挑んだ建築コンペ。
大阪駅の北ヤードの国際コンペに、九州芸工大学の建築学科と
共同でトライしたのですが、私の大学の師匠と建築学科の先生の中で
「ブレードランナーの映画のあの光景を表現できないか」と
アイデアフラッシュが出たことがありました。
(当時はその映画を見ておらず、全然ピンときませんでしたが・・・)

そういう街の空間をイメージする上で、映画は過去から未来まで、
いくつもの時代設定があって、テーマに合わせた世界観が表現されている。
どういう街を、どういう空間を創造するか、という問いに対して、
映画で見た景色というのも1つのヒントになるのです。

地域や外国の歴史や文化についても映画から学ぶことは多い。
日本映画でいえば、小津安二郎の映画は名作です。
家の中から見える景色や日常の風景、東京との対比、
尾道という地域の日常がそこには浮かび上がってきます。
外国の映画を見ると、一神教や貴族社会、差別と、
宗教観や文化の違いが日本とは大きく異なり、
描き方1つでもその国のバックボーンがよくわかります。

最近意識的に選ぶ映画としては、家族にまつわるものが多いです。
強烈な家族観として影響を与えた映画は、なんと言ってもゴッドファーザー。
血の繋がった家族はもちろんのこと、コミュニティというか、契りを交わした
「ファミリー」の絆はとても強く、裏切りがあった場合には家族だろうが
容赦ない。外国のギャング映画はこの傾向が強いですが、中でもゴッド
ファーザーは私の中では印象に残る映画です。

最近家族映画の対比として面白かったのが、日本でも話題になった
「万引き家族」「そして父になる」の是枝監督の映画と、
アカデミー賞をとった韓国映画の「パラサイト」、
そして「わたしはダニエルグレイグ」「家族を想うとき」を
作ったイギリス人ケンローチ監督の映画。

どの映画も貧困な家族に光を当てた映画ですが、
描き方がそれぞれ異なるし、その国の家族観や生き方が色濃く
反映されている点で、学ぶこと、気づかされることがありました。

日本の1地域のまちづくりに取り組む中で、その地域の歴史や文化
だけでなく、日本という国の風土や風習、外国との対比、
人間としての生き方と、自らのルーツを知り、他地域との対比の中で
地域を深掘りする視点がますます必要になってくるのではと思います。

取り留めもない話になりましたが、これからもたくさんの映画を
観て大きな世界を知り、自らの教養と視野を広げていきます。

(佐藤 直之)

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