地域活性化の仕事をしていると、常に「集客」のことが話題に上がる。
確かにお客さんに来てもらって、地域に足を運んでもらうことは
とっても大切なことだけど、でも「集客の質」ってあると思います。
誰でも来てもらうことが正しいとは思いません。
何かのきっかけでその地域のことが好きになったり、
他の地域よりも「あの地域が好き」って言える地域との
コミュニケーションが生まれることはとても素敵ですよね。
でも、何かを無料でもらえるとか、誰か芸能人に会えるとか
いわば「お得感」で来てもらうことは、果たして地域のために
なるんだろうかと常々疑問を抱いています。
その方が手っ取り早いというか、楽なんです。
一時的にはたくさんのお客さんが来てくれて、賑わって、
「おー、上手くいったね」って満足感は得られます。
でも、その「お得感」だけで来た人が果たしてその地域の
ファンになってくれるかというと甚だ疑問が残ります。
観光まちづくりの仕事をしていると、あまりプライベートで
行ったことが無かった地域とご縁が生まれて、
地域の方々とお話しする中で「お!」って気づかなかった
魅力を教えてもらうことが多々あります。
私たちの仕事は言わば地域のことを地域の人から教えてもらって、
一般的なメディアやSNSでは気づかないディープな地域の魅力を
教えてもらって、発掘して、それを具現化するお仕事なんです。
だから、私たちが知り得たそのディープな魅力を、
何かのきっかけで好きになってくれる人たちに伝えたいと思うんです。
少しずつその魅力が伝わることだったり、地域の人たちと触れ合うことで
好きになるきっかけが生まれたり。ゆっくりじっくり、それが本当の意味での
ファンづくりだと感じている一方で、「たくさんの人たちに来てほしい」と
いう「集客」に対する要望が地域から、行政から聞こえてきます。
何年もかけて地道に地元の人たちと話し合って、発掘してきたその価値が、
「集客」という魔法の声で、別の次元に移ってしまう。
もう一度言いますが、「お得感」を出せば楽なんです。
テレビで見たあの芸能人が来る!となると、それはその地域に魅力を感じて
ではなく、もう別の目的になってるんです。
そのイベントは集客的に成功なのかもしれないけど、それまでに積み上げた
地域の魅力の底上げには、また蓋をしてしまうことになります・・・
急がば回れ、そう思うんです。
これまで「集客の量」に惑わされた歯痒い経験のたびに、
とても悔しい思いをしています。
私たちは、決して「集客の量をもたらすプロ」ではありません。
ゆっくりじっくり、長い時間をかけてファンを作っていく地域と
観光まちづくりの仕事をしていきたいと思う今日この頃です。
(佐藤 直之)