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最近の自然体験ブームに感じる違和感。

コロナ禍のキャンプブーム、自然体験ニーズに便乗して、あちこちにコンテンツ・話題盛り沢山の施設が続々とオープンしている。

有名メーカーや映えるキャンプ施設、星がついた有名レストラン、おしゃれなカフェ、ショップ、自然体験スペースと、これでもかと話題・滞在・消費に繋がるコンテンツが目白押し。
1日いても時間が過ごせる囲い込みの戦略。

遊ぶところがたくさんできて喜ばしいことなのかもしれないけど、私個人はなぜかこの動きを素直に喜べない。
どこもかしこも「自然」を生業に、商業まみれの一途を辿っている違和感が拭えない。

自然と一体化しているように見えて、そこには大きな経済活動が発生して、たくさんの電気や資源を消費している。
なのに一方で「SDGsだ!」と高らかに謳っている。
ものすごいギャップを感じるのは私だけだろうか。

自然はそもそも地球からいただいた贈り物。
次世代に残していくための財産。

誰もが気軽に楽しめるはずの、様々な生態系と共存していくはずの自然だったはずなのに、いつからか「商売道具」として自然が利用されてはいないかと訝るようになった。

この動き、都市部周辺ではどんどんと加速していくのではないかと思う。
一方で、気候変動が現実のものとなり、海の魚が乱獲で取れなくなったり、遺伝子組み換えとかもはや自然ではないのに自然と歌う商品ができたり、地球という生命体と経済行動のバランスがおかしくなってきている。

今日の新聞では、50年後には日本の人口が9000万人を割るという深刻なニュース。人口は確実に減っていくのに、新たな大型開発、大きな経済活動は果たして必要なんだろうか・・・

私達のフィールドとしている地方はまだその大きな波には直面していないけど、いずれはやってくる問題。
地方においてももちろん経済活動は大切だけど、そこに根付く自然や文化の環境があってこその話であり、いかに「環境」と「経済」の無理のないバランスを生み出していくかが、これからの地方にとって大切だと思う。

先日訪れた福岡のパタゴニアショップ。
服は何度か購入したことがあり、創業者のイヴォンさんが個人の財産を気候変動を改善する活動に寄附するというニュースは知っていた。
スタッフの方とお話をする中でパタゴニアとしての地域での取り組みを色々と教えてもらったり、農業にも取り組んでいることを知った。

パタゴニアの歴史が詰まった書籍を購入してじっくり読んで、いかに環境に負荷をかけずに経済活動を続けるのか、大量消費ではなく一生ものとして消費を減らし長く着続けられる服を作っていこうという哲学に感動した。

時を同じくして訪れた大分湯布院の熊谷牧場キャンプ場。
ご両親の牧場の財産を受け継いで、リタイアした後にキャンプ場をオープン。
1日1組限定で、由布岳をゆっくりと眺められるゆったりとしたスペース。
経済ばかりに走って所狭しと区画を整備するのではなく、自分たちのペースでゆっくり迎えたい、利用者にはこの自然と風景をゆっくりと味わってもらいたいという、自然を尊重した姿勢に
とても感銘を受けた。

私たちも地方でまちづくりを支援する中で、ともすれば大型開発や自然のバランスを壊すような経済活動を誘発することにもなりかねない。

そうならないように、地方の根っこをしっかりと見つめて、地元の方々と対話し、祖先が残してくれた大切な環境を継承していけるような取り組みを応援していきたいと思います。

自戒を込めて。

(佐藤 直之)

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