いよいよ旅も最終日。
既に帰りたくない病が出ている。
その気持ちを表すかのように、生憎の曇り空だ。
これまで意外にスムーズに旅してきたもんだから、
当初の予定は既に達成し、最終日どこに行くかを
前の晩から考えていた。
バスに揺られて郊外の森林公園かワイナリーに行くか、
もしくはまだ行ってないNorth Westを回るか。
いろいろと悩んだ挙げ句に後者のプランに。
いつものごとくStreetcarに乗り、ダウンタウンへと向かう。
2日目に行ったTanner Spring Parkでは、
ガイド付きの自転車ツアーが開催されている。
歩道が広いからできるんだろう。
自転車好きとしては、とっても参加したいツアーだ。

自転車ツアー
まずは、お土産を買いに3回目のPOWELL’S BOOKSに立寄り、
そこから歩いてNorth West地区へ。

North West
このNorth West地区には小さいけどユニークなギャラリーがたくさんあると
情報をゲットしていたので、今日はART DAYだとワクワクしていたけど、
なんと日曜日は閉まっているという幸の薄さ・・・
(いつも調べずにあてずっぽに行ってしまう癖があるので直さないと)
せめて美術学校だけでもと言うことで、
PNCA(Pacific Northwest College of Art)へ。

PNCA
世界中からユニークな人材を集め、ポートランドから世界に向けて
クリエイティブな人材育成を進めている。
その最先端のART大学が一般の方にも広く開放されているんだから、
ポートランダーがうらやましすぎる。
大学はやっぱりまちなかにあって、いろんな感性が交流する場所であって欲しい。
近所の我が母校が解体されて、つくづくそう感じる今日この頃。
その大学の近くには、
倉庫街をリノベーションした何やら面白そうな場所が。

倉庫街をリノベーション
ALBERTAで出会ったカフェBARISTAがテナントで入居している。
欧米の方は本当に外が好き。テラス席が一番の特等席。
そういう風景を見て、私はいつもなんとなくお店に吸い寄せられる。
テラスに人がいる風景は、実はお店の宣伝になっている(と私はいつも思っている)。
その隣には、ポートランド生まれの靴ブランドKEENのショップが。

ポートランドで生まれた靴ブランドKEEN
この建物は廃材を活用したりと、環境に配慮した企業イメージを
象徴する場所であり、出店する建物と場所にしっかりとこだわるのがポートランドスタイル。
このこだわりぶりが、愛してやまないファンを増やすんだと思う。
最後の最後まで買うかどうか悩んだけど、息子の靴のみ購入。
(そしていつも買わなかったことを後悔するパターン)
結構な歩行量。そろそろお昼にしようかと近くのリノベーションレストランへ。

倉庫をリノベーションしたレストラン
わずか1週間の滞在だけど、すでに胃が疲れている。
アメリカ料理はもういいかなと思っていたけど、
最後の記念にとボリューム感満点のハンバーガーを注文。

ランチで食べたハンバーガー
・・・。
もういい。御馳走さま。
はちきれんばかりのお腹を抱えて、しばしダウンタウンと散策。
行き忘れていたセンスの良いショップ「Alder&Co」へ。

センスの良いショップAlder&Co
そして最終日という誘惑に負けて、昼からブリュワリーへ。
昼だというのに満員御礼。昼間から人目をはばからずに堂々と飲めるのが良い。
しかも、これがイベント時ではなく、日常のことだからなお良し。

休日のブリュワリーは、昼から飲むお客さんで賑わう。
既にほろ酔いである。
あとは、この街の空気に身を委ねて、溶け込むまでに心を開放しよう。
たくさんの余韻を持って日本に帰ろう。
最後の晩餐に向けて、バスに乗ってDIVISION通りへ。

DIVISION通り
ここに来たのは言うまでもない。
人気のタイ料理「POKPOK」へ行くためだ。

お客の絶えないPOKPOK
遠目から見ても行列がはっきりと見えるくらいに混んでいた。
入口には受付カウンターがあって、そこにひっきりなしに人がやってくる。
受付をすると、
「19時にもう一度来てくれ、それまでは向かいのBARで楽しんでくれ」と。
そう、あまりの人気ぶりに、向かいにはPOKPOKのウェイティングバーとして
繁盛するお店「Whiskey Soda LOUNGE」があるのだ。
多分系列店ではないと思うけど、メニューもウェイティングにふさわしい内容と
なっていて、「これがわかりやすい相乗効果」と実感させてくれる。
お互いにWIN-WINだし、良いことずくしだ。

POKPOKのWaiting BAR
19時にPOKPOKに戻ると、それからゆうに1時間は待たされ、
20時頃にようやくお店の中へ(結局は2時間待った)。

POKPOKの内観
ただ、待っただけのことはある。どれも絶品。
行列に並ぶのが嫌いな私でも、ここは待った甲斐があったと納得。
ポートランドを訪れたら是非とも行ってみて欲しい。
こうして私達のポートランドツアーはあっという間に幕を閉じた。
NYとかミラノ、バルセロナとかの大都市と違って、
「これ!」という飛び抜けたものはないけど、若者達が自分たちの
納得のいくやり方・こだわりで商売をし、そこに根をおろし、
ローカルに密着した居心地の良いコミュニティがそこここにあって、
水辺や公園等の公共投資が暮らしの質を押し上げている。
いわば「自己満足度100%」の街なんだ。
気持ちの良い生き方、自分なりのスタイル、開放的でのびやかな空間、
上質な食の時間、かけがえのない家族・仲間・・・
ポートランドはポートランドなんだと、みんなが思っている。
これまでに出会い、会話を交わした人たちから、
そうだろう、いやそうに違いないと確信に変わった。
それがあれば良い。
それがあれば、人生が豊かになる。
それを聞いて、人がまた移り住んでくる。
「帰りたくないな」
帰りの空港で出会い、私にそうつぶやいた修学旅行生は、
何年後かにここに移り住んでいるんだろうか。
このGOOD DESIGNのAKASKA航空の飛行機に乗って。
ポートランド、また来る日まで。
ごきげんよう、さようなら。